TRAILER

CONCEPT

沖縄戦の図・全14部をのこらず紹介する初めての試み。個々の絵についての説明や批評はあるが、全部を見ることで初めて画家の思考の軌跡が明らかになる。それは二人の沖縄戦への怒りと告発、最後には未来への祈りを現わしていることが分かる。全作品はなかなか展示できないので、作品の映像資料的な意味も大きい。

大作「沖縄戦の図」を次の世代、さらにその先の世代に継承していく佐喜眞美術館は時間を運ぶ箱舟である。丸木作品を永遠に残したいと制作した。 敗戦から77年、復帰50年、その時間を閉じ込め構成する。 映像には存命の直接戦争を語れる体験者の証言も入っている。世代的にはラストチャンスではないか?

戦争を唄で残そうという若い沖縄民謡歌手の・新垣成世と同級生の平仲稚菜が登場して、世代を超えて戦争体験を継承する。二人は平和への思いをYouTubeにアップし、その内容も織り込んでいる。

INTRODUCTION

丸木位里、丸木俊の大作「沖縄戦の図」は複数の時が運命的に交錯して生まれた。「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた二人は、最晩年、沖縄戦に六年かけて取り組んだ。そこには星が会合するような奇跡の物語があった。体験者の最後の証言を聞き、生々しく残る戦地を歩いた。平和を願い描いた二人の作品群の中で、沖縄の図はあますことなく戦争の悪を描き、日本軍の愚かさを伝えてその記憶を未来へ継承しようとする怒りあふれる作品となった。沖縄戦を描いた世界レベルの絵画とそこに込めた不思議なドラマを伝えるドキュメンタリーである。
絵は、1982年から1987年に描かれ全14部からなる。「集団自決」「喜屋武岬」「久米島の虐殺(1)(2)」「暁の実弾射撃」「亀甲墓」「ガマ」「ひめゆりの塔」「沖縄戦の図」「沖縄戦―きやん岬」「沖縄戦―自然壕」「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」。最後は戦後の読谷村を描き、若者に未来を託す画となった。中心作『沖縄戦の図』は沖縄の戦争のすべての断片が描きこまれ、画面右下の骸骨の中に位里、俊の自画像も描かれ絵の中から未来を見ているような表現となっている。
美術館誕生にもドラマがある。作品を展示する空間ということを超えて、絵と一体で同等の存在である。美術館はフェンスに囲まれ、普天間基地に食い込むように建っているので、米軍機の低空飛行で絵もびりびりと震えるようだ。館長の佐喜眞道夫は普天間基地に接収されていた先祖の土地の一部を取り戻して美術館を1994年に開館した。屋上からは普天間基地が一望でき、その先に米軍が最初に上陸した東シナ海が青く光り、敷地には一族の亀甲墓が絵を見つめている。開館の時「文化が基地を押し返した」と新聞は書いた。位里は美術館が出来た翌年に94歳で亡くなった。
映画は、沖縄戦の図・全14部をのこらず紹介する初めての試みである。個々の絵についての説明や批評はあるが、全部を見ることで初めて画家の思考の軌跡が明らかになる。「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた地上戦の真実、戦争に対する告発、最後には未来への祈りを現わしている。全作品はなかなか展示できないので、作品の映像資料的な意味も大きい作品となった。
大きなテーマである体験を風化させず、世代を超えて伝えていくという思いもあり、若い唄者、新垣成世が沖縄民謡でウチナーンチュの心を唄う。幼馴染で平和ガイドでもある平仲稚菜とともにYouTube配信も始めた。佐喜眞美術館で初めて見る「沖縄戦の図」に圧倒され、絵の前で戦世(いくさゆ)のなか生まれた沖縄民謡を絵の中のひとりひとりに語りかけるように歌う。
6年間沖縄に通い続けた丸木位里、丸木俊が残した、アートドキュメンタリー「沖縄戦の図 全14部」は、絵の前に立つ体験と同じように、スクリーンを見ながら改めて沖縄戦を考える作品とした。映像を見て再び絵を見てもらえることを深く望んでいる。

CAST STAFF

ナレーション
ジョン・カビラ

朗読
山根基世

資料提供
沖縄県公文書館
ひめゆり平和祈念資料館
久米島博物館
読谷村教育委員会
原爆の図 丸木美術館
琉球新報社

証言
新垣成世(沖縄民謡)  平仲稚菜
島袋由美子(久米島)  平良修
平良悦美        真喜志好一
佐喜眞道夫       山城博明
吉川嘉勝(渡嘉敷島)  丸木ひさ子
岡村幸宣        知花昌一
山内徳信        金城実
本橋成一        石川文洋

映像提供
NHK       1984年「日曜美術館 戦世の画譜」
シグロ/パラブラ  1983年「水俣の図 物語」
          1987年「ゆんたんざ 沖縄」

リサーチャー
上間かな恵

配給宣伝
海燕社 アルミード

イラスト
黒田征太郎

ポスターデザイン
ぎすじみち

タイトルCG
中村照雄
中村博子

技術
丸山俊
鈴木絢子
赤川淳

編集
荊尾明子

主題曲
川田俊介

音楽監督 音響デザイナー
尾上政幸

助監督
佐喜眞淳


監督 撮影
河邑厚徳

写真 石川文洋

CHRONOLOGY

1901年
1912年
1922年
1929年
1939年
1941年

1945年

1947年
1955年

1967年
1975年
1977年
1980年
1982年

1983年



1984年
1986年

1987年

1994年
1995年
2000年

丸木位里。広島に生まれる
丸木俊(赤松俊子)北海道の善性寺に長女として生まれる
位里、東京へ出て日本画を学び始める
俊、女子美術専門学校で四年間洋画を学ぶ
位里、美術文化協会にただ一人の日本画会員として参加
俊、美術文化協会に加入
位里、俊は結婚
広島原爆投下
三日後に位里、続いて俊が広島に入り約一月救援活動にたずさわる
神奈川県片瀬に住みながら「原爆の図」デッサンを始める
「原爆の図」第十部まで完成
以降、国内、海外世界十数か月で巡回展を続ける
原爆の図 丸木美術館を開館
「南京大虐殺の図」
「アウシュビッツの図」
「水俣の図」
「原爆の図」第十五部「長崎」
沖縄へ取材製作のため、南部佐敷にひと月半滞在する
「沖縄の図」八部連作完成
「久米島の虐殺(1)(2)」「亀甲墓」「自然壕」「喜屋武岬」「集団自決」
「あかつきの実弾射撃」「ひめゆりの塔」
続いて、沖縄戦の図のために首里にアトリエを借りて制作を始める
「沖縄戦の図(400×850)」完成
「沖縄戦 きゃん岬」「ガマ」
12月より翌年春まで沖縄・読谷村に滞在して制作、取材
読谷三部作が完成「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」
沖縄での14部が完成する
11月23日 佐喜眞美術館開館
丸木位里 死去(94歳)
丸木俊 死去(87歳)

PROFILE

河邑 厚徳(かわむら あつのり)

映画監督。元NHKディレクター
1971年にNHK入局以来、40年以上、ETV特集・NHKスペシャルを中心に現代史、芸術、科学、宗教、 環境などを切り口にドキュメンタリーを制作。現代の課題に独創的な方法論で斬り込み、 テレビならではの画期的な問題提起をするスタイルが特徴。これまで制作してきた番組は、 国内外の賞で入賞するなど、その独自の手法は評価を得ている。定年後はフリーで映像制作を続ける。

【映画】
「天のしずく 辰巳芳子 “いのちのスープ”」(2012)
「3D大津波 3.11未来への記憶」(2015)
「笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ」(2017)
「天地悠々 兜太・俳句の一本道」(2019)
「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図全14部」(2022)
「鉛筆と銃長倉洋海の眸」(2023)

【放送番組】
特集ドキュメンタリー「がん宣告」「私の太平洋戦争~昭和万葉集より~」、NHK特集「シルクロード」、 NHKスペシャル「アインシュタイン・ロマン」「チベット死者の書」「長崎の子・映像の記憶」 BSスペシャル「エンデの遺言~根源からお金を問う~」 ETV特集「一枚のハガキ・新藤兼人」「霊魂を撮る眼・江成常夫」 日曜美術館「無言館の扉 語り続ける戦没画学生」など多数。

©️2023 佐喜眞美術館、ルミエール・プラス

MESSAGE

2022年は復帰50年となり、メディアはこぞって沖縄戦を取り上げた。その中にあって、 この映画は絵画だけで戦争の全体像を浮き上がらせようとする一つの試みである。 歴史は時間とともに遠くなり忘れられていくものだが、絵画はいつも見るたびに、いま現在の体験となる。 時間を止めてリアルタイムで戦争の災禍を伝えられるのは藝術の持つ力である。 昨年の慰霊の日に小学二年生の徳元穂菜さんは 佐喜眞美術館で見た「沖縄戦の図」に衝撃を覚え平和の詩を作った。 このように世代を超えて沖縄戦を伝えることは画家の願いであった。 画家・丸木位里、俊の大作「沖縄戦の図」は広島・長崎の原爆の図を描き上げた後に 制作した戦争悪と日本軍の愚かさを未来へ伝える世界レベルの作品である。 位里は「沖縄を描くことが一番戦争を描いたことになる。 この絵は残しておかにゃあいけん」と語り、俊は「絵は私たちと戦争体験者との共同制作」と話す。 最晩年の二人が激戦地を歩き、遺族に会い、琉球文化と芸能を創作のエネルギーに渾身の14作が生まれた。 その絵を沖縄に全作品を置きたいという真摯な願いにこたえて、 その全作品は宜野湾の佐喜眞美術館に収められた。 このアートドキュメンタリーは全14部をのこらず紹介する初めての試みであり、 画家の思考の軌跡をたどる謎解きの物語となった。ウクライナでの戦争が続く今こそ、 アートは平和の祈りを運ぶ箱舟である。

THEATRES

地域 劇場 電話番号 公開日 備考
沖縄 桜坂劇場 098-860-9555 6月17日(土)〜7月14日(金) 上映終了
ミュージックタウン音市場 098-932-1949 6月23日(金)〜7月17日(月) 上映終了
よしもと南の島パニパニシネマ 0980-75-3215 6月23日(金)〜7月6日(木) 上映終了
シアタードーナツ 070-5401-1072 10月5日(木)〜 上映終了
東京 ポレポレ東中野 03-3371-0088 7月15日(土)〜28日(金) 上映終了
東京都写真美術館ホール 03-3280-0099
(代表)
9月12日(火)〜24日(日) 上映終了
シネマ・チュプキ・タバタ 03-6240-8480 8月7日(月)~31日(木) 上映終了
下高井戸シネマ 03-3328-1008 10月14日(土)~10月20日(金) 上映終了
一般財団法人大竹財団 03-3272-3900 12月12日(火) 上映終了
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 9月15日(金)〜21日(木) 上映終了
福島 フォーラム福島 024-533-1515 11月3日(祝•金)〜9日(木) 上映終了
埼玉 深谷シネマ 048-551-4592 9月24日(日)~10月7日(土) 上映終了
神奈川 横浜シネマリン 045-341-3180 8月12日(土)〜18日(金) 上映終了
川崎市アートセンター 044-955-0107 10月7日(土)〜13日(金) 上映終了
長野 千石劇場 026-226-7665 8月11日(金)〜17日(木) 上映終了
上田映劇 0268-22-0269 8月15日(火)〜18日(日) 上映終了
愛知 名古屋シネマスコーレ 052-452-6036 8月19日(土)〜25日(金) 上映終了
刈谷日劇 0566-23-0624 10月6日(金)〜12日(木) 上映終了
大阪 第七藝術劇場 06-6302-2073 7月29日(土)〜8月11日(金) 上映終了
ムービー・カフェ・マテリアル谷町 06-6777-9193 2024年1月12日(金)〜15日(月) 上映終了
京都 京都シネマ 075-353-4723 7月28日(金)〜8月3日(木) 上映終了
兵庫 神戸映画資料館 078-754-8039 8月11日(金•祝)〜15日(火) 上映終了
ヱビスシネマ 0795-88-5910 9月8日(金)〜21日(木) 上映終了
広島 八丁座 082-546-1158 8月4日(金)〜10日(木) 上映終了
香川 キネマほうぼう 090-6483-5886 10/29(日)・11/5(日)・8(水) 上映終了
愛媛 シネマルナティック 089-933-9240 8月12日(土)〜18日(金) 上映終了
高知 ゴトゴトシネマ 090-9803-9984 9月2日(土) 上映終了
福岡 kino cinema天神 092-406-7805 8月11日(金)~17日(木) 上映終了
熊本 Denkikan 096-352-2121 8月18日(金)〜24日(木) 上映終了
大分 シネマ5 097-536-4512 8月12日(土)〜18日(金) 上映終了
玉津東天紅 0978-25-4433 8月13日(日)〜16日(水) 上映終了
別府ブルーバード劇場 0977-21-1192 8月4日(金)〜10日(木) 上映終了
宮崎 宮崎キネマ館 0985-28-1162 8月4日(金)〜17日(木) 上映終了